コールセンターにおけるATTとは?ATTを活用した効率的なコールセンター運営と顧客満足度の向上
コールセンターでよく耳にする「ATT」は、主に「Average Talk Time(平均通話時間)」を指します。
顧客とオペレーターが通話している時間の平均値を算出し、コールセンターの運営効率や顧客満足度の向上に役立てるうえで重要な指標です。
近年では、電話対応だけでなく、チャットやメールなど他のチャネルも増加していますが、音声通話は依然として重要な顧客接点の一つです。
本記事では、コールセンターにおけるATTの概要や算出方法、メリット・デメリット、向上のための具体的施策、さらに他の指標との組み合わせや成功事例を詳しく解説します。

1. コールセンターのATTとは

1.1 概要と定義
ATT(Average Talk Time)は、オペレーターが実際に通話している時間の平均値を示す指標です。
コールセンターでは電話対応がメインチャネルのひとつであり、この通話時間を定量的に把握することが運営の最適化に直結します。
計算式は以下のとおりです。
ATT = (合計通話時間) / (対応件数)
例えば、1日で合計300分(5時間)の通話を行い、20件の通話対応を行った場合、ATTは「300分 ÷ 20件 = 15分」となります。
1.2 ATTとAHTの違い
同じように通話時間を扱う指標にAHT(Average Handling Time)があります。
AHTは、通話時間に加えて後処理時間(ACW)なども含めた「対応時間の平均値」を指します。
一方、ATTは純粋に通話している時間のみを算出するため、AHTよりも短い時間となるケースが多いです。
AHTやATTを組み合わせて分析することで、通話中のやりとりと後処理の両面をバランスよく評価できます。
2. コールセンターでATTが重要な理由
ATTを重視することは、コールセンターの運営において以下のような重要な効果をもたらします。
単に「通話時間を短縮すればよい」というものではなく、顧客満足とのバランスを適切に取ることが必要です。
2.1 業務効率の客観的評価
ATTは、オペレーターが1件の通話にかける平均時間を示すため、業務の客観的な評価指標となります。
オペレーター間やチーム間で比較し、通話時間が極端に長い・短い場合の原因を探ることで、業務プロセスの改善やスクリプトの整備が進みます。
2.2 顧客満足度との関連
通話時間が長ければ顧客の負担が増える一方で、十分な問題解決を行わないまま通話時間を短縮しすぎると、顧客満足度が下がる可能性があります。
最適な通話時間を見極めることで、顧客にとっても企業にとっても効率的なやりとりが実現します。
2.3 リソース管理の最適化
ATTを把握することで、オペレーターの配置やシフトの組み方を最適化できます。
ピークタイムにおける通話量やオペレーターの負荷を考慮しながら、無駄のない人員計画を立てることが重要です。
2.4 他指標(KPI)との相乗効果
ATTはAHTやFCR(First Call Resolution)、CSAT(顧客満足度)など、他の指標と組み合わせて分析すると、コールセンター全体のパフォーマンスをより正確に把握できます。
例えば、ATTが短いのにFCRが低い場合は、顧客が再度問い合わせる可能性が高くなり、長期的には効率が悪化するかもしれません。

3. コールセンターATTの算出方法と計算例
ATTを計算するためには、特定期間(1日、1週間、1か月など)における以下の値を把握します。
3.1 合計通話時間
オペレーターが実際に通話していた時間の総和です。
保留時間や後処理時間は含まないことが多いですが、企業やシステムの定義によっては若干の差異があります。
3.2 対応件数
同期間内にオペレーターが対応した通話の件数です。
転送や2次対応などが発生する場合、どの段階で「1件」とカウントするかを明確にしておく必要があります。
3.3 ATT計算の例
1日の合計通話時間が360分(6時間)で、対応件数が30件の場合、以下の計算でATTを求めます。
ATT = 360分 ÷ 30件 = 12分
この場合、オペレーターは1件あたり平均12分かけて通話対応を行ったことになります。
4. ATTのメリットとコールセンターの課題

ATTを指標として活用することで、コールセンターの運営に多くのメリットがもたらされます。
しかし、一方で幾つかの課題も存在します。
以下にその概要をまとめます。
4.1 メリット
メリット | 内容 |
---|---|
業務効率の可視化 | 通話時間の平均値を把握することで、オペレーターのパフォーマンスを定量的に評価しやすくなる |
トレーニングの焦点化 | ATTが極端に長い・短いオペレーターを特定し、必要に応じて個別トレーニングを行う |
コスト削減 | 通話時間の最適化により、オペレーターの稼働効率が上がり、人件費や設備費を抑えやすくなる |
満足度向上 | 適度な通話時間で的確に問題解決を行うことで、顧客満足度(CSAT)が上昇する可能性 |
4.2 課題
課題 | 内容 |
---|---|
短縮のしすぎによる質低下 | 通話時間を無理に短縮しようとすると、問題解決が不十分となり、顧客の再問い合わせや不満を招く |
通話時間のばらつき | 問い合わせ内容が複雑な場合、通話時間が長くなるのは必然であり、一概に長時間を悪と見なせない |
後処理時間との分離 | ATTは後処理時間(ACW)を含まないため、業務全体の把握にはAHTなど他の指標も必要 |
マルチチャネル対応 | メールやチャット対応が増える中、通話時間だけで全体を評価するのは限定的 |
5. ATT向上のためのコールセンター施策
ATTを最適化(一般的には短縮)しつつ、顧客満足度を落とさないためには、以下のような施策が有効です。
5.1 スクリプトとナレッジベースの整備
オペレーターが通話中に迷うことなく回答を導き出せるよう、FAQやマニュアル、ナレッジベースを整備します。
更新頻度を高め、常に最新情報が反映される仕組みが重要です。
5.2 トレーニングとフィードバックの強化
オペレーターに対して定期的なトレーニングを行い、通話録音やモニタリングを用いて具体的なフィードバックを提供します。
長期的な視点でスキルアップを促し、通話時間を適正化します。
5.3 CRMやCTIシステムの導入
顧客情報が分散していると、オペレーターが情報を探す手間がかかり、通話時間が延びる原因になります。
CRMやCTI(Computer Telephony Integration)システムを導入し、顧客データを一元管理することで、通話中のやりとりを効率化できます。
5.4 他指標との組み合わせ
ATTだけでなく、AHTやFCR、CSATなど他の指標も組み合わせて分析すると、よりバランスの取れた改善策を導き出せます。
通話時間を短縮するだけでなく、問題解決率や顧客満足度とのバランスを考慮します。
5.5 チャットボットやAIの活用
よくある問い合わせをチャットボットやAIで自動化し、オペレーターはより高度な問い合わせに集中できます。
これにより、全体の通話負荷が減少し、ATTを含む各種指標の最適化が期待できます。
6. ATT向上のコールセンター成功事例

6.1 事例1:大手通信企業のマニュアル整備とトレーニング
ある通信企業では、長年蓄積されたノウハウをマニュアル化し、オペレーターに配布するとともに、定期的なトレーニングを行いました。
結果として、通話時間が平均15%短縮され、顧客満足度が10%上昇。
再問い合わせ率も減少し、コスト削減に成功しました。
6.2 事例2:中小IT企業のCRM導入
中小規模のIT企業がCRMシステムを導入したところ、オペレーターが顧客履歴を瞬時に確認できるようになりました。
これにより、1件あたりの通話時間が20%短縮され、顧客からの評価も向上し離職率も低下し、オペレーターのモチベーション向上にもつながっています。
6.3 事例3:金融機関のAIチャットボット活用
某金融機関は、AIチャットボットを導入してよくある問い合わせを自動化しました。
オペレーターが複雑な相談に集中できるようになり、電話対応の通話時間が平均15分から12分に短縮。
チャットボットで一次対応が完了するケースも増え、顧客満足度調査で好評を得ています。
7. コールセンターATTと他指標の相互作用

ATTは、単体で運用するだけでなく、他の指標(AHT、FCR、CSATなど)と組み合わせることで、コールセンター全体の状態を把握しやすくなります。
以下に代表的な指標との相互作用を示します。
7.1 AHT(Average Handling Time)
AHTは通話時間に加え、後処理時間(ACW)も含めた対応時間を示す指標です。
ATTとAHTを比較することで、通話自体の効率と後処理の効率を別々に評価し、改善ポイントを特定できます。

7.2 FCR(First Call Resolution)
FCRは、顧客が初回の問い合わせで問題を解決できた比率を示します。
ATTが短くてもFCRが低ければ、顧客が再度問い合わせる可能性が高く、長期的には効率が悪化します。
ATTとFCRのバランスを考慮することで、最適な通話時間帯の指標を確立できます。
7.3 CSAT(顧客満足度)
通話時間の最適化が必ずしも顧客満足度の向上に直結するわけではありません。
極端に通話時間が短いと、顧客が不十分な回答と感じるケースもあります。
CSATの調査結果とATTを比較し、顧客が満足する通話時間帯を見極めることが重要です。
7.4 リソース管理(WFM)
ワークフォースマネジメント(WFM)ツールと組み合わせることで、ATTを含む各指標の履歴データを分析し、シフト計画や人員配置を最適化できます。
ピーク時の対応力強化やアイドルタイムの削減などが期待できます。

8. まとめ:ATTを効果的に活用し、コールセンター運営を最適化
コールセンターにおけるATT(Average Talk Time)は、顧客との通話時間を数値化し、業務効率や顧客満足度の向上に寄与する重要な指標です。
以下のポイントを押さえて活用することで、コールセンター運営を大きく改善できます。
- 通話時間をただ短縮するのではなく、顧客満足度とのバランスを取る。
- 後処理時間やFCRなど他の指標と組み合わせ、総合的な改善を図る。
- スクリプト整備やトレーニング、CRM導入など具体的施策を実行し、オペレーターが通話中に必要情報へすぐアクセスできる環境を整える。
- AIチャットボットやBIツールを活用し、データ分析やルーティンワークの自動化を推進する。
ATTを活用する際のポイントは、「通話時間の短縮=業務効率」ではなく、「最適な通話時間を目指す」ことです。
顧客の問題解決や満足度を損なわずに通話時間を最適化し、全体的なパフォーマンスを向上させる戦略が鍵となります。
今後も最新の技術とベストプラクティスを取り入れ、コールセンター運営を絶えず改善していきましょう。
