【N-1期】役員が知っておくべき「N-1期」の重要事項とN-1期の具体的なアクション
【N-1期】役員が知っておくべき「N-1期」の重要事項とN-1期の具体的なアクション上場準備は、会社にとっての一大プロジェクトであり、経営者や役員にとってキャリア最大の挑戦と言えるでしょう。
その中でも、上場申請を行う直前の事業年度、いわゆる「N-1期」は、会社の未来を左右する極めて重要な期間です。
この時期は、事業の成長を加速させながら、上場企業としての基盤を盤石にするための正念場。
初めての経験で抱く不安と期待に応えるため、このN-1期に役員が何をすべきか、その本質と具体的なアクションを深掘りして解説します。
なぜN-1期は「会社の運命を決める1年」なのか?
【N-1期】役員が知っておくべき「N-1期」の重要事項とN-1期の具体的なアクションN-1期が特に重要視される理由は、単なる手続き上の期間ではありません。
この1年間の行動が、上場審査の成否を決定づけると言っても過言ではない、戦略的な意味合いを持っています。
審査基準日となる
N-1期の実績は、上場審査において最も重視される財務数値や事業計画の根拠となります。
この期間の業績が目標をクリアしているか、成長性が持続可能であるか、利益の質は健全かなどが、審査の厳格な目でチェックされます。
投資家は、このN-1期の数字を基に将来の成長性を判断するため、役員は事業計画を達成する責任を強く問われます。
内部統制の構築が本格化する
N-2期までに整備した内部統制(ガバナンス、リスク管理、コンプライアンスなど)の仕組みを、N-1期は実際に運用し、その実効性を証明する期間です。
ルールがあるだけでは不十分で、それが全社に浸透し、機能しているかを厳しく見られます。
審査への対応が始まる
N-1期は、証券会社や監査法人との実務的なやり取りが本格化する時期です。
申請書類の作成、膨大な質問への回答、主幹事証券会社による中間審査など、上場審査を円滑に進めるための地固めを行います。
この時期に役員が適切な行動を取らなければ、事業の進捗遅延、内部統制の不備発覚、最悪の場合、上場延期や見送りといったリスクに直面します。
役員がN-1期にやるべき「5つのこと」:期待を確信に変える戦略
【N-1期】役員が知っておくべき「N-1期」の重要事項とN-1期の具体的なアクションN-1期に役員が特に注力すべきことは、大きく分けて
- 「ガバナンス」
- 「財務・事業計画」
- 「コンプライアンス」
- 「申請準備」
- 「外部プロとの連携」
の5つです。
これらは互いに密接に関連しており、包括的なアプローチが求められます。
1. ガバナンス体制の強化と運用:形だけの組織から「機能する」組織へ
上場企業には、経営の透明性が強く求められます。
N-2期までに形式的に整えた組織体制を、このN-1期は実際に動かし、その実効性を証明する段階に入ります。
取締役会の実質化
形骸化した取締役会では、上場審査を通過できません。
重要案件は、取締役会で真剣に議論され、その過程と結論が詳細に議事録に記載されていることが求められます。
社外役員や監査役は、独立した第三者の視点から経営を監督する重要な役割を担います。
彼らとの連携を密にし、活発な意見交換を行い、健全なチェックアンドバランスを機能させることが不可欠です。
例えば、重要な投資案件やM&A、大規模な組織変更などは、取締役会で多角的な視点から議論される必要があります。
権限規定の見直しと運用
組織内の意思決定プロセスを明確にするための権限規定。
N-1期には、それが現場で厳格に守られているかを監査法人も確認します。
例えば、
一定額以上の設備投資には取締役会の決議が必要
経費精算には上長と経理担当の二重承認が必要
といったルールを定めた場合、それが厳密に運用されていることを証明しなければなりません。
2. 財務・事業計画の確実な実行と精度向上:数字に責任を持つプロフェッショナルへ
N-1期の業績は、投資家への信頼を築くための最も重要なメッセージです。
役員は、事業計画の進捗を常に把握し、計画達成に向けてリードする必要があります。
予算の予実管理の徹底
N-2期に策定した事業計画に基づき、月次、四半期ごとに予算と実績を比較し、なぜ乖離が生じているのかを深く分析します。
単なる数字合わせではなく
「売上が計画を下回ったのは、競合の出現か?」
「人件費が増えたのは、想定外の中途採用か?」
といった具体的な要因を特定し、次のアクションに活かすことが求められます。
役員自らが数字の細部まで把握し、現場の状況を正しく理解することが不可欠です。
四半期決算トライアルの実施
上場後は、四半期ごとの適時開示が義務付けられます。
N-1期から、45日以内に精度の高い決算書類を作成し、開示するための体制を構築する「お試し運用」を行います。
このトライアルを通じて、経理部門と監査法人の連携を密にし、問題点を洗い出し、改善を繰り返します。
この体制が構築できていない場合、審査で大きなマイナス要因となり、上場延期のリスクが高まります。
財務諸表の適時レビュー
監査法人の指摘は、会社の課題を浮き彫りにする重要な情報です。
月次の財務諸表を役員会で定期的にレビューし、監査法人からの指摘事項には迅速かつ真摯に対応する仕組みを構築しましょう。
単に指摘をクリアするだけでなく、それがなぜ発生したのか、根本原因を特定して再発防止策を講じる姿勢が重要です。
3. コンプライアンス意識の浸透とリスク管理:見えないリスクを可視化する
上場後の不祥事は、会社の信頼を大きく損ない、株価に甚大な影響を与えます。
N-1期から全社員のコンプライアンス意識を高めることが重要です。
内部規程の整備と周知
就業規則、旅費規程、情報セキュリティ規程、インサイダー取引防止規程など、上場企業として求められる各種規程を整備します。
重要なのは、ただ規程を作るだけでなく、全社員にその内容を周知徹底し、遵守を促すことです。
定期的な研修やeラーニングの導入、社内ポータルでの情報共有など、浸透させるための具体的な施策を役員が率先して実行する必要があります。
リスク要因の洗い出し
事業に潜む法的リスク、情報セキュリティリスク、労務リスクなどを、関係部署と連携して網羅的に洗い出します。
例えば、特定顧客への依存度が高い、労務管理が煩雑である、個人情報の取り扱いが不十分である、といった潜在的な課題を特定し、具体的な対策を講じることが役員の重要な責務です。
営業部門の役員がN-1期に特に注力すべきこと
【N-1期】役員が知っておくべき「N-1期」の重要事項とN-1期の具体的なアクション営業部門の役員は、会社の収益を牽引する重要な役割を担います。
N-1期においては、目標達成に向けた「攻め」の姿勢を維持しつつ、上場企業に求められる透明性と健全性を両立させる「守り」の意識を持つことが不可欠です。
KPIの厳密な管理
単なる売上目標だけでなく、その達成に繋がるKPI(Key Performance Indicator)を細かく設定し、週次・日次で管理します。
例えば、新規顧客獲得数、商談数、受注率、顧客単価など、目標達成までのプロセスを数値化し、進捗をリアルタイムで把握しましょう。
「売上計上基準」の厳格な運用
審査では、売上が適切に計上されているかが厳しくチェックされます。
商談段階での口頭約束や曖昧な契約書はトラブルの元です。
契約書や納品書、検収書などの書面を整備し、会計部門と連携して適正な売上計上基準を全営業担当者に周知徹底させます。
季節性の考慮
特定の時期に売上が偏る傾向がある場合、その理由と来期の予測を論理的に説明できる必要があります。
監査法人や証券会社からの質問に答えられるよう、過去のデータを分析し、変動要因を明確にしましょう。
管理部門の役員がN-1期に特に注力すべきこと
【N-1期】役員が知っておくべき「N-1期」の重要事項とN-1期の具体的なアクション管理部門の役員は、上場準備において最も多くの実務を担い、上場企業としての「骨格」を築き上げる役割を担います。
財務・会計、人事・労務、法務、情報システムなど、専門的な分野で緻密な体制構築と運用が求められます。
1. 財務・会計の正確性と透明性の確保
上場企業に求められる会計基準は厳格です。
管理部門の役員は、正確な財務情報を提供するための体制を確立しなければなりません
監査法人との連携強化
N-1期は、監査法人が提出された財務諸表を厳密に監査する期間です。
監査法人からの質問や指摘事項には、迅速かつ正確に回答し、必要な資料を滞りなく提出できる体制を整えます。
特に、売上や費用の計上基準、資産の評価方法、引当金の設定など、会計処理の妥当性を明確に説明できるように準備しましょう。
予実管理の高度化
事業部門と連携し、より精度の高い予実管理システムを構築します。
予算差異の要因を分析し、経営陣に正確な情報をタイムリーに報告する仕組みを確立することが重要です。
月次決算の早期化
上場後は、投資家に対して迅速な情報開示が求められます。
N-1期から、月次決算を可能な限り早期に完了させるための業務フローを確立し、運用します。
2. 人事・労務体制の整備
人事・労務に関するコンプライアンス違反は、上場審査で大きなリスクと見なされます。
労働環境の適法性チェック
労働時間管理、残業代の支払い、有給休暇の取得状況など、労働基準法に準拠しているかを徹底的に見直します。
サービス残業がないか、36協定が適切に運用されているかなど、細部にわたって確認しましょう。
人事評価制度の整備
上場後は、従業員向けのストックオプションなど、役職員へのインセンティブ付与が一般的になります。
それに先立ち、公正で透明性の高い人事評価制度を確立し、全従業員に周知します。
給与規定・退職金規定などの見直し
就業規則や給与規定など、上場企業としてふさわしい内容に改訂し、弁護士などの専門家のレビューを受けましょう。
3. 法務・リスク管理体制の構築
契約書の審査体制確立
事業部門が締結する各種契約書(顧客との取引契約、外注先との業務委託契約など)について、法務部門による審査を徹底する仕組みを構築します。
知的財産権の整理
自社の商標や特許権が適切に管理・保護されているかを確認します。
他社の知的財産権を侵害していないかどうかも法務部門と連携して調査します。
【まとめ】上場は「通過点」であり、「スタート地点」である
【N-1期】役員が知っておくべき「N-1期」の重要事項とN-1期の具体的なアクションN-1期は、役員だけでなく、全社員が上場という共通のゴールに向けて一丸となる時期です。
役員は、上記の具体的なアクションを実行するとともに、社員に対して上場準備の意義を伝え、モチベーションを高める役割も担っています。
不安な気持ちは当然です。しかし、上場は決してゴールではありません。
上場は、社会的な信用を得て、さらなる事業成長を実現するための「スタート地点」です。
このN-1期を乗り越えれば、新たなステージへと進むことができます。
この記事が、上場準備に臨む役員の皆様の一助となり、不安を乗り越え、期待を確信に変える一歩となることを願っています。
【おまけ】上場時の役員コメント集(5つのパターン)
上場セレモニーや記者会見で語られる役員コメントは、会社のカルチャーや未来への決意を伝える重要な機会です。
それぞれの役割やメッセージに合わせたコメント例を5つのパターンでご紹介します。
感謝と決意を伝える(王道パターン)
「本日、上場という日を迎えることができたのは、ひとえに創業以来、当社を支えてくださった株主の皆様、そして何よりも、日々の業務に邁進してくれた社員とそのご家族のおかげです。心より感謝申し上げます。上場はゴールではなく、第二創業期のスタートです。皆様の期待を上回る企業となるべく、役員一同、邁進してまいります。」
技術・サービスへの情熱を語る(開発・技術担当役員向け)
「私たちが提供する〇〇(サービス名)は、社会の課題を解決するため、技術の力で生み出されたものです。上場後も、イノベーションを止めず、お客様にとって真に価値あるサービスを創出し続けることをお約束します。この情熱を胸に、社員一丸となって、より良い未来を創造してまいります。」
営業・事業拡大への自信を示す(営業・事業担当役員向け)
「私たちは、〇〇という市場で、確実に成長を遂げてきました。上場によって得られる資金と信用力を最大限に活用し、新規事業への投資、海外展開、優秀な人材の獲得を加速させます。日本、そして世界を舞台に、私たちの事業が社会の発展に貢献する姿を、ぜひご覧ください。」
管理体制の構築とその重要性を訴える(管理部門役員向け)
「上場企業に求められるガバナンスとコンプライアンスは、私たちの事業成長を支える強固な基盤です。この日まで、厳格な内部統制体制を構築するために、多くの困難を乗り越えてきました。この地道な努力が、投資家の皆様の信頼を勝ち取るものと確信しています。今後も透明性の高い経営を徹底し、健全な成長を目指してまいります。」
創業からのストーリーとビジョンを語る(創業メンバー役員向け)
「〇〇年前、私たちは〇〇(場所)で、わずか数名でこの会社を立ち上げました。当時は誰もが夢物語だと思っていた上場が、今日、現実のものとなりました。これは、私たちのビジョン『〇〇』に共感し、信じてくれた仲間たちのおかげです。私たちはこれからも、このビジョンを追求し続け、社会に大きな変革をもたらす企業を目指します。」

























































































